座繰製糸工場（昭和興業）

明治、大正、昭和中期にかけて日本経済の基礎を築いた生糸産業は、時代の推移と共にその殆どは廃業致しましたが、機械化等で一部残っている中で、初期の繭から生糸のとれる迄を目の前に見ることの出来る座繰り製糸の姿のまま、平成7年6月迄操業して来た工場が全国で唯一つありました。昭和興業（下諏訪町）がそれです。「あゝ野麦峠」の作家山本茂実氏の仲介にて、今回工場主より無償譲渡を受け日本財団（旧日本船舶振興会）並びに松本市より多額の補助金を受け、移転復元することが出来ました。

今日迄操業を続けてきた大資産家であった経営者は偉大であり、また経営者に従って時代を超えて座繰り一途に従事してきた従業者の姿にも、その忠実さと精神の強靱さに驚嘆するのであります。

この移転復元に当たっては斯界の権威者千葉大学名誉教授大河直躬工学博士の指導に基き、現状を損なうことなく座繰りが出来る様、動態保存されたものであり、当時の若き工女達の糸取りの姿を思いおこすことが出来ます。

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